本書の特徴
絵の中の鳥でさえ籠から出られるのに、僕はここからどこへも行けない――
絵が実体化する不思議な森に囚われた、絵描きの青年ジル。
故郷への帰還を諦めていた彼の前に、ある日美術商を名乗る謎の少女ローラが現れる。
「あなたをこの森から解放してあげると言ったら?」
森を抜け出すための条件は、彼女のために見たこともない“竜”を描き上げることだった。
心を閉ざしたジルが、ローラとの交流を重ねる中で本当の「帰る場所」を見つけるまでの、美しくも切ない再生の物語。
ファンタジー好きに贈る、心震える連作幻想奇譚が登場!
著者について
赤羽理人
美しくも切ない、唯一無二の世界を紡ぎ出す新星作家。人と、人ならざる者たちとの出会いを瑞々しい筆致で描き、その圧倒的な物語性で特別賞を受賞。読む者を幻想の世界へと誘う、待望のデビュー作。
目次
美術商ローラと家路を急ぐ青年
絵が実体化する不思議な森に囚われた、絵描きの青年
千年続く洋裁店
山火事ですべてを失ったドリアードの洋裁店員
或る魔女の話
旧友の魔女を追う吸血鬼の学者
世界で一番孤独な竜
退屈な天上で下界を夢見る孤独な竜
すべての物語が繋がるとき、ローラという存在の謎と、この世界の美しさに辿り着く。