本書の特徴
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本書は2015年5月刊行の『ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン』の改訂第2版であり、『An Architectural Approach to Level Design 2nd Edition』の日本語版です。
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プレイヤーの感情をコントロールする“空間デザイン”の原理を学ぶ!
名作と呼ばれてきたゲームタイトルには、プレイヤーが気づかないうちにプレイ方法を教え、導き、のめり込ませる工夫が満ちています。それらの工夫を実際のゲームタイトルから抽出したうえで建築理論と融合させ、読者のゲーム開発に役立つ知識として提供します。
また、「ストーリーを伝えるためのムービーが多すぎてゲームプレイに集中できない」「次にどうしたらいいのかわからない」といった、プレイヤーが飽きてしまったり、ストレスを感じてしまう課題の解決にも、人が過ごす空間を研究してきたコミュニケーションとしての建築の原理は先例として役立ち、ヒントを与えてくれます。
ゲームデザインの持つ側面の中で、レベルデザインは空間設計(デザイン)に用いるツール、利用するエンジンによって具体的な手法が異なります。
ゲームジャンルごとに中心となるメカニクスも違うため、方法論を導くことが難しいとされてきました。
本書は「空間設計」という観点から、ゲームと共通項を持つ“建築・空間デザイン”の原理を学ぶことで、ゲームデザインへのヒントを得るというアプローチを選択しています。
建造物と実際のゲームタイトルを比較しながら分析していくことで、空間をレイアウトするスキル、空間を用いて感情を喚起するテクニック、建築理論に裏付けられたゲームレベル(ステージ)を作成する技術を身に付けることができます。
紹介する数々の建造物は、見た目の良し悪しだけではなく、空間の組み立て方について多くの事を教えてくれます。
特に、歴史的に評価された建物は訪れた人に与える「体験」を重視しており、ゲームプレイに通じる要素に満ちています。
― 優れた建造物の空間は、
・ストーリーを伝える
・アクションを促す
・交流を促進する
つまり、説明が無くとも、人の感情をコントロールする力を持っています。
また、ゲーム制作の技術はすぐに過去の物となりがちですが、空間の原理は古びることがありません。本書の研究内容は、制作環境が変化しても使える原理として有用です。
【この本で学べること】
・現代のレベルデザインの慣習、手法、ツールに関するケーススタディ
・歴史的建造物の考察から優れたレベルデザインについて学ぶ
・空間を使用してプレイヤーの感情を導いたり、引き出したりする方法
・現実世界に影響を与える目的で作られた空間デザインの考察
・ストーリーの伝達、アクションの促進、交流を推進する空間作成
【著者について】
クリストファー・トッテン(Christopher Totten)は、ジョージ・メイソン大学ゲームデザイン学科の助教授です。ワシントンD.C. のアメリカ・カトリック大学で、デジタルメディアに重点を置いた建築学の修士号を取得しました。彼はPie For Breakfast Studios の創始者であり、いくつかのインディーズゲームやシリアスゲームのプロジェクトに、アーティスト、アニメーター、レベルデザイナー、プロジェクトマネージャーとして参加してきました。クリスは、自身の作品とじっくり向き合って、表現豊かな自分らしい作品を作り上げる、新しい世代のゲームデザイナー形成を支援したいと考えています。彼は学生や他のデザイナーと共に、複数の分野にまたがる研究を通してゲームの固定観念を破ろうとしています。
目次
※【NEW】は、本書(第2版)から追加された完全新規の章となります。その他、各章で大小様々なアップデートがあります。
※以下の目次構成は制作中のもので、一部変更になる可能性があります。
Chapter1 建造物からレベルデザインを学ぶ準備
Chapter2 レベルデザイナーのための描画テクニック
Chapter3 レベルデザインのワークフロー
Chapter4 基本的なゲーム空間の種類
Chapter5 環境アートによるコミュニケーション
Chapter6 危険な建築でエキサイティングなレベルを作る
Chapter7 ゲーム空間における報酬
Chapter8 レベル1-1 チュートリアルレベル【NEW】
Chapter9 ゲーム空間におけるストーリーテリング
Chapter10 インタラクティブ空間とワールドデザイン
Chapter11 プロシージャルに生成されたレベルを扱う【NEW】
Chapter12 プレイヤーの交流を生み出すレベルデザイン
Chapter13 レベルデザインにおけるサウンド、音楽、リズム